白光




空は雲ひとつない穏やかな蒼。
ほんわりと暖かく、絶好のお花見日和。
今日は、僕たち万事屋一行+姉上、さらにお登勢さんたちも誘って、土 手の桜並木の下に集まった。
ささやかだけど、お重を持って、お登勢さんが差し入れてくれたお酒を廻して。
もちろん、僕と神楽ちゃんは大人 しくお茶を飲んでいるけど。

この面々で和やかな花見なんて出来るのかなあと危ぶんでいたけど、定春は暖かくて眠くなったのか、木の下で丸 くなってるし、神楽ちゃんはお重とは別にたくさん握ってきたおにぎりに夢中になっている。
姉上やお登勢さんたちは、お重をつまみながらおしゃべり していて。

順番に見回していって、ふと銀さんに目をやった僕は、一瞬ぎくりとした。
いつになく大人しく、杯を舐めている銀さんの 白い姿が、桜の中に溶けてしまいそうに見えたから。
陽の光に白く光る花は、ふわふわと夢うつつのようで、どこか遠くを見るような目をした銀さん は、この世のものではないかのようだった。

「銀さ・・・」
思わず呟いた声が届いたのか、ゆるりと彼の目がこちらを向く。

「何、 お前も飲みたいの?
んー、銀さんのとっておきの団子をやるから、こっちにしとけ」
酒を飲みながらも、甘いものはしっかり確保していた銀さ んが、三色団子の串を差し出す。
その様子はいつものふてぶてしい銀さんで、僕はなんだか心配して損したような、驚かされて悔しいような気持ちで、 口をへの字にしながら手を伸ばす。

「なんだよ、団子じゃそんなに不満かよ。ならやんねーぞ」
不機嫌そうに見えたのか、銀さんが拗 ねたように手をひっこめようとする。
「え、一度くれるって言ったのに、武士に二言はないですよね」
僕も、いつもどおりに返し、団子の串を 奪い取るべく、飛び掛った。


「またじゃれてんのかい、花見に来てまで騒ぐんじゃないよ」
「花見なんてな、騒ぐためのもん だろーが」
呆れたように呟くお登勢さんの言葉に、耳ざとく口を挟みつつ、銀さんは僕の手から団子を死守する。

ばたばたと騒ぎなが ら、僕は心の奥でこっそり安堵していた。
今目の前にいる人は、ちゃんと温かい手を持った、実体だ。

そうして、やっぱりというかな んというか、僕らの花見は大騒ぎになるのだった。






ブログからサルベージ。
OPで皆で土手にいるシーンに刺激されて書いた模様。
こういう「皆で」なノリも憧憬に満ちていて好き。

2010.4.2 up




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